『いまさら聞けない ビットコインとブロックチェーン』
昨夜のコインチェックの記者会見、ものすごい反響でしたね。個人的にはセキュリティ面で大きな穴があった本社には、相応の責任があると感じています。阿鼻叫喚の投資家さんたちの様子を見ていると、想像を絶するものがありますしね…。
一方で、記者会見での記者の姿勢が問題だと言う意見も多数あるようです。
僕はまだ記者会見の全容を見ていないのでなんとも言えませんが、仮想通貨の知識のなさと、これまで可視化されていなかった、既存マスメディアの悪しき習慣にフォーカスが当たった結果と言うことなのでしょうか。
山中教授の件といいい、問題の本質をわかっていないのにあまりに上から目線な記者の意見に対して、辟易している人は少なくないようですね。
つい先日読み終わった仮想通貨の入門書は、まさに渦中にいるコインチェック株式会社の共同創業者兼COO(最高執行責任者)、大塚雄介氏の書いた本です。
彼は1980年生まれ。現在37、8歳と言うことでしょうか。そして社長の和田晃一良さんは27歳と言うことですから、年齢だけでもこの業界の新興ぶりがよくわかりますね。
平易な文章で非常に流れがわかりやすい説明
さて、周辺情報を知った上で肝心な本書になるわけですが、ぶっちゃけかなりわかりやすいです。
ビットコインと既存の現金やポイントカード、クレジットの違いといったかなり初歩的な部分から、ビットコイン・ブロックチェーンの仕組みを序盤でかなりわかりやすく解説しています。
そして、後半ではビットコイン周辺の法整備と金融とITの融合で高まるフィンテックの動きまで、具体的な事例と併せて紹介されています。
仮想通貨周辺の入門としては、文句なしに読みやすいです。
マウントゴックス事件に触れつつ、今回の事態に…
件の騒動が起きていたので、本書ではビットコインの「リスク」をどのように伝えているのかにもっとフォーカスしていきたいと思います。
※あくまで素人目に見た意見です。
仮想通貨は基本的に分散型台帳で取引記録を管理するので、そのシステム上記録の改ざんは非常に難しい技術と言われています。
そのため、通貨の盗難が起こりうるのはユーザー情報の方です。最も標的になりやすいのは、「仮想通貨の取引所」と言うことになります。
仮想通貨は取引を行なったあらゆるPCに保管されているけれど、私たちがそれらを取引するには通帳を作るように、取引サイトに登録する必要があります。
つまり通帳=取引サイトから情報が盗み取られれば、「仮想通貨を所持している」と言う情報がなくなり、結果お金を失ってしまうことになるわけです。
本書では、国内で起きた最大の事件としてマウントゴックス事件を扱っています。
世界的にも大きな衝撃となり、一時期仮想通貨の相場が急落したことでも知られるこの騒動。マウントゴックスが運営していた取引所がハッキングされ、当時の時価総額で45億ドルもの通貨が奪われてしまったとする事件です。
この事件での教訓として、ユーザーからの保有資産をオンライン上にはほぼ置かず、大半をオフライン=ネットから切り離したUSBなどのデバイスに保管しておくなどの対策が取られているといいます。
こうした様々な方策に触れていてもなお、今回のような流出事件が起きてしまったわけです。
仮想通貨周辺の知識に関するわかりやすさなら随一
とはいえ、冒頭でも述べた通り本書のわかりやすさは随一だと思います。
チャレンジングな業界だからこそ、未整備な課題も多い
今回、コインチェック株式会社はセキュリティ管理の面で問題点がいくつも出ました。そもそも金融庁の定める仮想通貨交換業者に認定を受けていなかったことも、大きな話題となっています。
そもそもその状態であれだけ大々的なCMを打てていたんですから、すごいですね。
まあそれでも、やはり一番の問題はハッカーによる不正行為と言えます。今回の問題を受けて通貨が奪われてしまったNEMのチームがハッカー追跡ツールを開発しているとのことですから、問題が解決するのを祈るばかりです。
この分野はまだまだチャレンジングな要素が多い世界です。こうした騒動が起きれば、一気に信頼性を損なってしまう危険性も十分あります。
現金だって日々なりすまし詐欺や窃盗で奪われているのにも関わらず、やはり長年に渡って利用され続けてきた通貨の信頼性は、そう損なうものでもないでしょう。
とは言え、やはりこれまで何冊か関連本を読んできた人間にとって、仮想通貨は既存の社会のありようを変える凄まじいポテンシャルがあると思っています。
ネットに繋がっている以上完璧なセキュリティ対策というのは難しいと思いますが、それでもまっとうな運用でより安全で新規参入者を呼び込めるような、そういう土壌が形成されたらいいと思います。
いずれにせよ、本書は仮想通貨・ブロックチェーン入門書として非常に優れているのでおすすめです。
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